【本】ダンゴムシに心はあるのか:新しい心の科学 森山 徹
ダンゴムシに心はあるのか:新しい心の科学 森山 徹
PHPサイエンス・ワールド新書
ダンゴムシ・・節足動物に属するオオダンゴムシ科の甲殻類。草むらや石の裏などに潜む、あの黒光りするムシである。チョンと触るとあっという間にボール状に丸まる。なんて弱虫だと思って油断すると、目を離したすきにスタコラサッサと逃げ出してどこかに隠れてしまう。といって追いかけようという気にならないほどありふ
れているというより、追いかけるに値しない雰囲気を醸し出しているように思う。せっせと働くアリンコと同じように地面に住んでいるのだが、どうもアリンコよりズルそうな気がして私はあまり好きではなかった。
本著はあくまでもダンゴムシが本題ではなく、「心はあるか」ということがポイントである。結論から言うと「一寸の虫にも五分の魂」というくらいだから「心」はある。しかも科学的実験によって証明を試みているところが面白い。流石である。
筆者は「観察対象を未知の状態に置くこと」によって、ダンゴムシの行動がどのように変化するかに注目して心の正体を暴こうとしている。ヒトが困難に遭遇した時にどう行動するかによって、その人の本性がわかるようなものだ。たとえば、エンドレスに続く迷路に入れたら?とか、苦手な水で囲われたサークルから脱出は可能か?とか、触覚にカバーを付けて長く伸ばしたら・・などなど、さまざまな試練を与えてみるのだが、ダンゴムシ君はジェームス・ボンドよろしくいずれも見事に乗り越えてみせる。その所作に深い知能と人間のような心を見ているのだ。
著者は犬や猫についても一言触れている。
『もしあなたが、たとえば犬や猫を前にして、彼らが心を持っているように感じられるとすると、その感覚は「隠れた活動部位」が犬や猫の内に隠れていることから生じているのです』
ということは、犬や猫と互いに心が通じ合うことが科学的に証明され、これから見つかる未知の方法を使えば会話も成立する可能性があるということかもしれない。大いに期待しよう!
本著で私が一番感心したのは、ダンゴムシは道具を使うことができ、道具を使う知能を持っているということである。ただしダンゴムシに大脳はない。
大きな大脳を持っているからエライんだと思っている人類よ、あなたはダンゴムシとそう変わりはないのだということを知るべきである。